ゆきの子供達 第五十九章 冬の活動

それから毎晩、琵琶法師はゆきの茶席で歌いました。以前にも増して、ゆきの茶席は人気となりました。茶室の外は琵琶法師の歌を聴こうと群がって来た招待にあぶれた者たちで溢れ返るようになりました。

しかし、若殿はそのような光景を好ましく思いませんでした。「廊下は渡るためのものだ。お前の茶席を食堂に移した方がいいだろう」とゆきに言いました。

そこで、その後の茶席は城の食堂で催されるようになりました。夕飯が済んだ後、ゆきはその晩の客を高座に呼んで、お点前を披露しました。一方、琵琶法師は琵琶を弾いて歌い始めました。時々席を立って、歌いながら食堂を渡り歩きました。

琵琶法師は、日中はゆきや狐子達に会い、ゆきについて質問をし、相手の返答を紙に書きとめました。その日の質問が終わると、たいてい自分の部屋に戻り、その日に得た話について考えてみたり、以前の話と比べてみたり、次の日の質問を考えたりしました。ただ、話し相手が狐子の場合は、時々 一緒にしばらく残り、狐子の家族の話をしましたが、そのことは書き留めませんでした。しばらくすると、琵琶法師と狐子は、お互い相手の知らないまじないを使えると知って、教え合いました。

琵琶法師は何度か家老に会ってくれるように頼みましたが、家老はいつも会うことを拒みました。家老は茶席も避けていましたが、狐子が頼むと、しぶしぶ参加しました。

琵琶法師の腕前の噂を聞いて、茶席に招待してほしいという請願書を書く町人達が日に日に増えていきました。請願書の数を見た若殿は、「そんな大勢を食堂に入れるのは無理だろう。でも、ある程度人数をしぼることができるのなら招待しても良かろう」と、決められた人数の者を招待することを許しました。それ以来、毎日、請願書を書いた者の中から、決められた人数だけ抽選で選ばれて招待されるようになりました。招待客として選ばれた者は、雪が降り積もろうと冷たい風が吹こうと、必ずゆきの茶会へ現れるのでした。

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