ゆきの子供達 第八十三章 頭痛

狐一が琵琶法師とともに執務室に戻ると、狐子は家老と話をしていました。「今度はお前が叱られる番だぞ」と低く琵琶法師に呟いてから、狐一はニヤニヤ笑いながら声を上げました。「仰せの通り、琵琶法師さんを連れて参りました」

家老は立ち上がって、琵琶法師に近づきました。「広子という娘に呪いをかけたのはお前だな。説明せよ」

「申し訳ございません。あの子が狐の姿でいた狐一さんを見て悲鳴を上げたのを見て、落ち着かせようと思わず呪術を使ってしまいました。その呪文が人間に対してそれほど危険だとは知りませんでした。狐子先生の元でもっと勉強を励みます。反省します」と言うと、琵琶法師は深く頭を下げました。

家老は二人を見回しました。「こんな事件は二度と起こさないでほしい。特に我が殿のお父上がこちらにいらっしゃっている間は、我が殿に恥ずかしい思いをさせてはならん。分かったな?」

狐一の笑みはすぐに消えました。二人は頷きました。

「だから、二人とも、通常の仕事に加え、毎日狐子さんの元で適切な振舞い方を習ってもらいたい。分かったな?」

狐一たちがまた頷くと、家老は「下がれ」と命じて、席に戻りました。二人が部屋を出ようとした時、ほとんど聞き取れないぐらいの小さな声で「け、産まれたばかりの狸の方があの女狐よりも適切な振舞い方くらい分かるだろうよ」と言うのが聞こえました。

障子が閉まると、家老は両手で頭を抱えました。「頭が痛い。あいつらに噂話をする奴らのいじめ方まで教えないでくれ」

狐子は何食わぬ顔で答えました。「あら、私がいじめ方を教えるなんて、とんでもない。いじめた事うらないのに」

「嘘をつくな。ゆき様について悪い噂が立った時、誰があいつらをいじめていたのかも、どうしてそうしたのも分かっている。ただ、これからあいつらに模範を示してくれ。特に狐一の奴に」

狐子はクスクス笑いました。「頑張ります」

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