ゆきの子供達 第八十九章 殿様との会話

一方、ゆきたちはゆきの部屋に戻りました。皆が正座した後、殿様は話し始めました。「狐子殿、わしがここに籠城していた時、お前のような赤毛の娘に会ったことがあるな。お前はその子だそうだが、それは信じがたいことじゃ。その子のように、お前は十代後半と見える。お前を良く見ると、その子と良く似とる気がする。お前は本当にその子か?それとも、その子の娘とか、妹ではないのか?」

「本当ですよ。これなら、お信じていただけますか」と狐子は言うと、突然髪の毛の半分は灰色になり、口と目の周りに皴が現れました。「それとも、こうならばどうですか」今度は体が太た体になりました。「でも、そんな姿はあまり楽しくありませんね。これでいいです」狐子は元の姿に戻りました。

殿様は驚いていました。「まさか、何者だ?息子や、妖怪か何かがここに住むことを許しているのか?」

「父上、狐子は狐のようです。ゆきを助けた狐の娘だそうです」

「なるほど。狐は人の姿に化けることができるそうだな。狐子殿、どうしてそんなに目立った髪の色をしているのか?たった今のように、髪の色も変われるな」

狐子は甘く微笑みました。「狐だから、生まれた時からこの色なので、これが好きなのです。だから、姿を化けるおまじないを習った時、目立つかどうか構わず、この色でいいと決めました。まあ、あなた様なら、どんな色にするのですか?」

「ふむ」殿様は顎を撫でて、丁髷を触りました。「どんな色の髪にでもできるのなら、この銀髪を元の黒にするだろうな。何しろ、周りの者と同じような色にしかしたくないと思う。『出る釘は打たれる』と言うからな。ところで、お前はどのように当時の包囲された城を逃げ出せたのか?わしらと同じく、家来によって地下道のありかを知ったのか、それとも狐の呪術で逃げたのか?」

狐子はくすくすと笑いました。「私が狐の能力であの地下道を作って家老さんに見せたのですもの」と、ゆきとどの関係があることや、どうしてあの時彼女も籠城していたのかを説明し始めました。その途中、家老が戻ってきて、自分の経験を加えました。

その後、殿様は二人を見比べながらにやりと笑い、「ほ、二人とも、恋愛を暮したらしい。結婚式はいつだ?」と目を輝かせながら訊きました。

狐子と家老は慌ててしばらく沈黙しました。そして、家老は「そ…そのようなことは、ま…まだ決めていません」と言い、狐子は「父は…族長はまだちょっと…」と言いました。

「ほ、もう自分の意志で生きているというのに、問題は父親の許可なのか?そうじゃ、わしに任せろ。狐殿を呼びなさい。わしが仲人になろう」と殿様が言うと、狐子は「そんなにもったいない言葉をして下さったら、本当にありがとうございます」と、深く頭を下げました。

殿様は膝を叩き、若殿の方へ視線を向きました。「よし!息子や、不思議な琵琶法師を雇っているそうだ。あいつはどこに隠れているのか?」

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