ゆきの物語 第三十五章 庄屋の家の中

間もなく、ゆきたちは庄屋の家に着き、庄屋の妻が玄関先で、出迎えました。「ゆきさま、この粗末な拙宅にようこそおこしくださいました。おかえりなさいませ、ご主人さま」と言いました。

ゆきは「お邪魔します」と言い、庄屋は、「今、戻った」と言ってから、家の中に入りました。あっという間に、兄弟・従兄弟たちが、ゆきと一緒にいた庄屋の孫たちを取り囲みました。しばらくして、「何をしてたの?」とか、「ゆきさまはどんな人?」と話す声が聞こえました。その後、孫の男の子は狐子のところに来て手を掴み、「お姉さん、またおかしい顔を作って」と言って、子供たちの方に連れて行きました。程なく、子供たちの間からわいわい笑う声が聞こえてきました。

やがて、庄屋の妻は娘たちに手伝ってもらいながら食事を出しました。食事が終わった後で、ゆきは庄屋と内々に話しました。

ゆきは、「庄屋どのは文士だとお聞きしたのですが」と言いました。

庄屋は、「そういうわけではございませんが、時々本を読むのを楽しみにいたしております」と答えました。

ゆきは、「『源氏物語』のような本を市場で探していたところ、呉服屋さんも代書屋さんも言っていたことは、庄屋どのに聞いてみたら良いと教えてくれました」と話しました。

庄屋は、「『源氏物語』のことでしたら、家内とお話になるのが宜しいかと存じます」と答えました。

ゆきは、「分かりました。奥さまとお話する前に、何か私に仰りたいことはございますか」と聞きました。

庄屋は、「この国の、村から町へ通じている道はあまり良くないそうでございます。百姓にとって作物をこの町へ運ぶのは難しいそうでございます」と言いました。

ゆきは、「はい。殿に必ず報告しておきましょう。では、奥さまにお話を伺っても宜しいですか」と言いました。

それから庄屋は妻を呼び出しました。ゆきは本を探していることを告げ、「そのような本をお持ちでしょうか」と聞きました。

庄屋の妻は、「ございます」と言って、ゆきを他の部屋に導きました。ゆきが驚いたことに、そこには数十冊の本がありました。

ゆきは、「こんなにたくさん本があるなんて!一冊お借りしてもよろしいですか」と聞きました。

庄屋の妻は、「ゆきさまは有名な茶道家であるということをお聞きしました。もしゆきさまのお点前のお点前を拝見させていただけるなら、何冊でもお貸しいたします」と答えました。

それからゆきは皆の前でお茶を点てました。その後で、ゆきは庄屋の妻の助けを借りながら面白い本を選び、狐たちと一緒に城へ戻りました。

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