目次もくじ

  1. 第一章だいいっしょう  ゆきの紹介しょうかい
  2. 第二章だいにしょう  漁師りょうしとの出会であ
  3. 第三章だいさんしょう  きつねとの出会であ
  4. 第四章だいよんしょう  商人しょうにんとの出会であ
  5. 第五章だいごしょう  たすけて!
  6. 第六章だいろくしょう  みやこ到着とうちゃく
  7. 第七章だいななしょう  買物かいもの
  8. 第八章だいはっしょう  若殿わかとのとの出逢であ
  9. 第九章だいきゅうしょう  家老かろう調査ちょうさ
  10. 第十章だいじっしょう  家老かろう調査報告ちょうさほうこく
  11. 第十一章だいじゅういっしょう  忍者にんじゃ襲撃しゅうげき
  12. 第十二章だいじゅうにしょう  ゆきはどこだ?
  13. 第十三章だいじゅうさんしょう  一本いっぽん
  14. 第十四章だいじゅうよんしょう  救出きゅうしゅつ
  15. 第十五章だいじゅうごしょう  大名だいみょう
  16. 第十六章だいじゅうろくしょう  おに
  17. 第十七章だいじゅうななしょう  家来けらい不満ふまん
  18. 第十八章だいじゅうはっしょう  おに襲撃しゅうげき
  19. 第十九章だいじゅうきゅうしょう  おに敗北はいぼく
  20. 第二十章だいにじっしょう  殿様とのさま評議ひょうぎ
  21. 第二十一章だいにじゅういっしょう  大名だいみょう返事へんじ
  22. 第二十二章だいにじゅうにしょう  殿様とのさま返事へんじ
  23. 第二十三章だいにじゅうさんしょう  若殿わかとの出陣しゅつじん
  24. 第二十四章だいにじゅうよんしょう  大名だいみょうおも
  25. 第二十五章だいにじゅうごしょう  忍者にんじゃおも
  26. 第二十六章だいにじゅうろくしょう  ゆきの出発しゅっぱつ
  27. 第二十七章だいにじゅうななしょう  ゆきの台詞せりふ
  28. 第二十八章だいにじゅうはっしょう  家老かろう再雇用さいこよう
  29. 第二十九章だいにじゅうきゅうしょう  きつねとの会話かいわ
  30. 第三十章だいさんじっしょう  狐子ここ紹介しょうかい
  31. 第三十一章だいさんじゅういっしょう  市場いちば
  32. 第三十二章だいさんじゅうにしょう  呉服屋ごふくやなか
  33. 第三十三章だいさんじゅうさんしょう  面白おもしろほんはどこだ?
  34. 第三十四章だいさんじゅうよんしょう  市場いちばなか
  35. 第三十五章だいさんじゅうごしょう  庄屋しょうやいえなか
  36. 第三十六章だいさんじゅうろくしょう  しろかえ
  37. 第三十七章だいさんじゅうななしょう  狐子こことの会話かいわ
  38. 第三十八章だいさんじゅうはっしょう  評議ひょうぎ
  39. 第三十九章だいさんじゅうきゅうしょう  たび準備じゅんび
  40. 第四十章だいよんじっしょう  はじめのむら
  41. 第四十一章だいよんじゅういっしょう  女将おかみ到着とうちゃく
  42. 第四十二章だいよんじゅうにしょう  危難きなんうわさ
  43. 第四十三章だいよんじゅうさんしょう  おにとの遭遇そうぐう
  44. 第四十四章だいよんじゅうよんしょう  破壊はかいされたむら
  45. 第四十五章だいよんじゅうごしょう  ひろがるうわさ
  46. 第四十六章だいよんじゅうろくしょう  しろへの帰還きかん
  47. 第四十七章だいよんじゅうななしょう  女将おかみとの会話かいわ
  48. 第四十八章だいよんじゅうはっしょう  家老かろう助言じょげん
  49. 第四十九章だいよんじゅうきゅうしょう  面会めんかい準備じゅんび
  50. 第五十章だいごじっしょう  家来けらいつま
  51. 第五十一章だいごじゅういっしょう  茶席ちゃせき予定よてい
  52. 第五十二章だいごじゅうにしょう  三本さんぼん尻尾しっぽ
  53. 第五十三章だいごじゅうさんしょう  狐子ここはなし
  54. 第五十四章だいごじゅうよんしょう  はなしつづ
  55. 第五十五章だいごじゅうごしょう  家老かろうはなし
  56. 第五十六章だいごじゅうろくしょう  さびしげな二人ふたり
  57. 第五十七章だいごじゅうななしょう  居心地悪あごこちわる茶席ちゃせき
  58. 第五十八章だいごじゅうはっしょう  琵琶法師びわほうし到着とうちゃく
  59. 第五十九章だいごじゅうきゅうしょう  ふゆ活動かつどう
  60. 第六十章だいろくじっしょう  きつね到着とうちゃく
  61. 第六十一章だいろくじゅういっしょう  琵琶法師びわほうしはなし
  62. 第六十二章だいろくじゅうにしょう  たびはじ
  63. 第六十三章だいろくじゅうさんしょう  きつね土地とち
  64. 第六十四章だいろくじゅうよんしょう  子狐こぎつねとの出会であ
  65. 第六十五章だいろくじゅうごしょう  ひめとの出会であ
  66. 第六十六章だいろくじゅうろくしょう  ばん会話かいわ
  67. 第六十七章だいろくじゅうななしょう  族長ぞくちょうとの会話かいわ
  68. 第六十八章だいろくじゅうはっしょう  八狐はちことの会話かいわ
  69. 第六十九章だいろくじゅうきゅうしょう  ひめはなし
  70. 第七十章だいななじっしょう  きつねとの決戦けっせん
  71. 第七十一章だいななじゅういっしょう  狐子ここ勝負しょうぶ
  72. 第七十二章だいななじゅうにしょう  若殿わかとのとの茶席ちゃせき
  73. 第七十三章だいななじゅうさんしょう  しろへのもど
  74. 第七十四章だいななじゅうよんしょう  狐一こいち下女げじょ
  75. 第七十五章だいななじゅうごしょう  あたらしい制服せいふく
  76. 第七十六章だいななじゅうろくしょう  あたらしい仕事とごと

第一章だいいっしょう

ゆきの紹介しょうかい

昔々むかしむかし、あるちいさなむらにゆきというむすめがおばあさんと二人ふたりらしていました。ゆきは、とてもうつくしいでしたが、二人ふたり大変たいへんまずしい生活せいかつをしていました。むら全体ぜんたいまずしく、若者わかもの姿すがたもあまりられませんでした。そして、ゆきと結婚けっこんしたいというものも、だれ一人ひとりとしてあらわれたことはありませんでした。

「ゆきや、おまえしあわせをさがすために、みやこったほうがいいよ」と毎日まいにちおばあさんはいました。

「おばあさまをひとりここにのこしてみやこかけることはできません」とそのたび、ゆきはこたえました。

ある、おばあさんはくなりました。おばあさんをおはかほうむってから、ゆきは、なけなしの家財かざいあつめ、みやこけて出発しゅっぱつしました。

第二章だいにしょう

漁師りょうしとの出会であ

海岸

もなくゆきはうみきました。砂浜すなはま漁師りょうしあみいたあなつくろっていました。

「こんにちは、漁師りょうしさん。わたしはゆきともうします」とゆきはいました。

「こんにちは、ゆきさん」と漁師りょうしこたえました。

「よろしければ、わたしあみつくろうお手伝てつだいをいたします」とゆきはいました。

かりました。ゆきさんがあみつくろってくれるのなら、わたしかいります」と漁師りょうしいました。

それからゆきは砂浜すなはますわりながらあみつくろって、そのあいだ漁師りょうし海岸かいがんかいりました。

もなくゆきはあみつくろわりました。「漁師りょうしさん!あみつくろいました」とびました。

漁師りょうしあみをよくました。「きれいに修繕しゅうぜんできていますよ。まえより大分だいぶんよくなったようです。たすかりました。どうもありがとう」といました。

「いいえ、あまりうまくできなくてごめんなさい」とゆきはこたえました。

「これからどこにくところなのですか」と漁師りょうしきました。

しあわせをさがすためにみやこまいるところです」とゆきはこたえました。

「そうなんですか。では、頑張がんばってください」と漁師りょうしいました。

頑張がんばります」とゆきはいました。

「どうか、感謝かんしゃしるしかい半分はんぶんってください」と漁師りょうしいました。

「そんなにいただくことはできません」とゆきはいました。

「いいえ、つまらないものですよ。このつくろっていただいたあみで、たんとさかなつかまえられるとおもいますから」と漁師りょうしいました。

本当ほんとうですか。では、かいをいただきます。どうもありがとうございます」とゆきはこたえました。

それからゆきはかいふところれ、みやこかいました。

第三章だいさんしょう

きつねとの出会であ

しばらくくと、ゆきはのそばにすわって、うさぎいているきつね出会であいました。

「こんにちは、きつねさま。わたしはゆきともうします」とゆきはいました。

「こんにちは、ゆきちゃん」ときつねこたえました。

美味おいしそうなにおいがしますね。わたしはおなかすこし…すみません、きつねさま。よろしければ、そのうさぎけていただけませんか。わたしかいすこっているのですが」とゆきはいました。

「いいですよ。かいけてくれれば、わたしうさぎけてあげます。ところで、どうしてそんなにうつくしいおじょうさんがこのようなみち一人ひとりたびしているのですか」ときつねきました。

しあわせをさがすためにみやこくところです」とゆきはこたえました。

けてくのですよ」ときつねいました。

「はい。ありがとうございます」とゆきはこたえました。

それからゆきはかいはじめました。おどろいたことに、それぞれのかいなかおおきな真珠しんじゅはいっていました。

「あの、きつねさま、このかいなかはいっている真珠しんじゅもおりください」とゆきはいました。

「そんなにもらうことはできません」ときつねこたえました。

一粒ひとつぶだけでもってください」とゆきはいました。

「あなたのような気前きまえ人間にんげんには、これまで一度いちどったことがありません。それでは、真珠しんじゅ一粒ひとつぶと、数本すうほん尻尾しっぽとを交換こうかんしましょう。もし危険きけんかんじるようなことがあったら、この尻尾しっぽれながら『たすけて』とさんかいとなえてください。そしたら、わたしたち一族いちぞくはあなたをたすけるためにそこにあらわれます。三度さんどまでならたすけてあげましょう」ときつねじっぽんくらいの尻尾しっぽからりながらいました。

「そんな大切たいせつなものをいただくことはできません」とゆきはいました。

「たいしたものではないですよ」ときつねいました。

「そこまでおっしゃるのなら、ありがたく頂戴ちょうだいします」とゆきは真珠しんじゅ尻尾しっぽ交換こうかんしながらいました。

うさぎかいきながら、ゆきはのこりの真珠しんじゅふところれました。そして尻尾しっぽってうでかざりをつくり、自分じぶん手首てくびきました。

二人ふたりうさぎかいべたあとでゆきは「ご馳走ちそうさまでした。いただいたばかりでもうわけないのですが、そろそろ失礼しつれいします」とってまちかいました。

第四章だいよんしょう

商人しょうにんとの出会であ

ゆきはみやこ目指めざしてたびつづけました。あるとおしだったので、しずころになるとおなかはじめました。ふとあしめると、ゆきは美味おいしそうなにおいがあたりにただよっていることにがつきした。

「どこからあんな美味おいしそうなにおいがしてくるのかしら」とゆきはおもいました。まわりを見回みまわすと、道端みちばた天幕てんまくってあるのをつけました。天幕てんまく近付ちかづくと、そのにおいはいっそうつよくなりました。

天幕てんまくいたとき、ゆきは天幕てんまくうしろにいる呉服商ごふくしょうつけました。その商人しょうにん夕食ゆうしょく仕度したくをしているところでした。

「ごめんください」とゆきは商人しょうにんはなしかけました。

「どちらさまですか」と商人しょうにんたずねました。

「はい、ゆきともうします。美味おいしそうなにおいにさそわれてまいりました」とゆきはこたえました。

「そうですか。かわいそうにおなかかしているんですね。そうだ。おちゃれてくれませんか。一緒いっしょべましょう」と商人しょうにんいました。

「ありがとうございます」とゆきはこたえました。

それから、ゆきはかして、お点前てまえ披露ひろうしました。

商人しょうにんは、「たしかにいおちゃ使つかってはいるのですが、それでももとあじわすれてしまうほどの結構けっこうなお点前てまえでした。そんな見事みごと茶道さどうを、みやこ以外いがいにすることが出来できるとはおもいもしませんでした」と、おどろきました。「どちらでこれをならいましたか」

祖母そぼおしえてくれました」とゆきはこたえました。

「あなたのようにうつくしく、そして見事みごと茶道さどう美味おいしいおちゃれることの出来できむすめさんには、きぬ着物きものがよく似合にあうとおもいます。ちょうどここに、綺麗きれい絹製きぬせい着物きものがございます」と商人しょうにんいました。

「そうですか。そういったものをいままでたことがありませんでした。ぜひ、てみたいのですが、おかねがありません」と、うつむきながらこたえたときたび途中とちゅう漁師りょうしからかいをもらったことをおもしました。ゆきはふところなか真珠しんじゅしながら、「これと交換こうかんしていただけませんか」といました。

「これほどおおきな真珠しんじゅいままでたことがありません」と商人しょうにんいました。「その真珠しんじゅ一粒ひとつぶえに、わたし一番いちばん綺麗きれい絹製きぬせい着物きものをさしあげます」

「これほど綺麗きれい着物きもの旅路たびじることはできません。きっとよごしてしまうでしょうから、もしよろしければ、つつんでくださいませんか」とゆきはおねがいしました。

「はい、もちろんですとも。ありがとうございます」と商人しょうにんって、ゆきから真珠しんじゅをもらい、一番いちばん綺麗きれい着物きものつつんでゆきにわたしました。

「どうしてあなたのようなうつくしいおじょうさんが、このようなみち一人ひとりたびしているのですか」と商人しょうにんきました。

しあわせをさがすためにみやこくところなのです」とゆきはこたえました。

「そうですか。でも、このみち一人ひとりたびするのは危険きけんですよ。今夜こんやわたしのそばでほうがいいでしょう。そうすれば、ここでわたし護衛ごえいをすることができますから。わたしは、明日あしたちますが、そのみやこほうへはきません」と商人しょうにんいました。

「ありがとうございます。では、お言葉ことばあまえて、今夜こんやここでさせていただきます」とゆきはこたえて、っていたぬの地面じめんひろはじめました。

地面じめんるのはかわいそうだ。わたし天幕てんまくてもかまいませんよ。そこのまく仕切しきりますから、ご安心あんしんなさい」と商人しょうにんいました。

「はい。では、そうさせていただきます」とゆきはこたえました。ぬのひらいたとき、一冊いっさつほんちました。

「それはなんですか」と商人しょうにんきました。

家系図かけいずです。わたし家族かぞく最後さいご子孫しそんなので、ほかだれひとがいません」とゆきはこたえました。

第五章だいごしょう

たすけて!

つぎあさ商人しょうにん手紙てがみをゆきにわたして「みやこいたあとで、温泉おんせんってこの手紙てがみをそこの女将おかみわたしてください。そのひとわたしあねなのです」といました。

かりました。かならずその手紙てがみをおねえさんにおとどけします」とゆきはいました。

それからゆきはみやこかい、商人しょうにんべつほうきました。

もなくゆきは浪人ろうにんらに出会であいました。

「こんにちは、おさむらいさま。わたしはゆきともうします」とゆきは浪人ろうにんかしらいました。

「ふふふ。なんでそんなにうつくしいむすめがこんなみちたびしているのかな」とかしらいました。

しあわせをさかすためにみやこくところです」とゆきはいました。

今日きょうはついてるぞ」とかしらってゆきをつかみました。

「そうだな」とほか浪人ろうにんいました。

「いや!さむらいじゃない!山賊さんぞくだわ!はなして!たすけてたすけてたすけて!」とゆきはさけびました。

あっという一匹いっぴき二匹にひき、ついには百匹ひゃっぴきものきつね浪人ろうにんあいだあらわれて、浪人ろうにんんでつまずかせました。

畜生ちくしょう妖怪ようかいが!げよう!」と浪人ろうにんいました。

「このおじょうさんはおれまもっている。貴様きさまのようなやつ彼女かのじょゆび一本いっぽんれてはならんぞ」ときつね浪人ろうにんかしらいました。

それから浪人ろうにんみなきつねわれてげていきました。

きつねさま、たすけてくださってどうもありがとうございます」とゆきはいました。「真珠しんじゅをもう一粒ひとつぶげましょうか」

「そんなにもらうことはできませんよ」ときつねこたえ、「あともう二回にかいまでわたしんでもかまいません。さあ、なおして、たびつづけなさい」とはげましました。

「どうも、ありがとうございます。それでは失礼しつれいします」とって、みやこへとあるはじめました。

第六章だいろくしょう

みやこ到着とうちゃく

もなくゆきはみやこもんきました。

「こんにちは。わたしはゆきともうします。どうぞよろしくおねがいします」とゆきは門番もんばんいました。

「なんできみのようながこのまち一人ひとりるんだ」と門番もんばんいました。

しあわせをさがすためです」とゆきはこたえました。

「では、このまち仕事しごとがあるんだな」と門番もんばんいました。

「そうです。あっ、それと、この手紙てがみ温泉おんせん女将おかみにさしあげることになっているのです」とゆきは門番もんばん手紙てがみせながらいました。

「それが本当ほんとうなら、まちはいってもかまわない。しかし、もし三日みっか以内いない仕事しごとつからなかったら、まちらなければならんぞ」と門番もんばんいました。

「はい、かりました。すみませんが、温泉おんせんはどこですか」とゆきはきました。

門番もんばん道順みちじゅんおしえたあとで、ゆきはもなく温泉おんせんました。

「ごめんください」とゆきはびました。

「いらっしゃいませ」と女将おかみ返事へんじをしながら、てきました。

「こんにちは。わたしはゆきともうします。女将おかみさんにはなしをさせていただいてもよろしいですか」とゆきはきました。

「こんにちは、ゆきさん。わたし女将おかみです」と女将おかみいました。「いかがなさいましたか」

じつは、旅路たびじで、とある商人あきんどさまと出会であいました。商人あきんどさまは、この手紙てがみ温泉おんせん女将おかみであるおねえさまにわたしてくださいといました。こちらをどうぞ」とゆきは手紙てがみ女将おかみわたしながらいました。

「どうぞがってください。そのあいだんでおきますから」と女将おかみいました。

「お邪魔じゃまします」とゆきはいました。

「ああ、おとうとはあなたのお手前てまえ素晴すばらしいといております。そのお手並てなみを拝見はいけんしたいとおもいます。おとうとからもらった、そのあたらしいきぬ着物きものあとで、ちゃててください。もしあなたがおとうととおりのかたなら、ここでやといますよ」と女将おかみいました。

「はい。でも、わたしすこよごれております。こちらのあたらしいきぬ着物きものよごしたくないとおもっているのですが」とゆきはいました。

「あ、そうですね。どうぞ、あちらがお風呂ふろになっています」と女将おかみいました。

風呂ふろはいってきぬ着物きものてから、ゆきはお点前てまえ披露ひろうしました。それを見届みとどけてから、女将おかみは、「どうやらおとうともうしていたよりも、ゆきさんのちゃうで達者たっしゃのようですね。こんなに素晴すばらしいお手前てまえを、十五じゅうごねん以上いじょうものあいだたことがありません。失礼しつれいをいたしました。どうぞここにおとどまりください」とふか会釈えしゃくをしながらいました。

「どういたしまして。まこと粗末そまつなものでしたが」とゆきはいました。「よろしければ、ここでつとめさせていただきたいとおもいます。でも、わたしはこのまちいたばかりです。まいもなく、おかねもありません。こちらにかいからつけた真珠しんじゅ少々しょうしょうあるだけです」と、ゆきはふところから真珠しんじゅしていました。

「それでは、その真珠しんじゅ使つかって首飾くびかざりをつくるといでしょう。ここにある部屋へやんでも結構けっこうです。明日あしたわたしとゆきさん、二人ふたり一緒いっしょ買物かいものをしましょう。真珠しんじゅ首飾くびかざりをつくるのに宝石ほうせきしょうったり、きぬ着物きものをもうすこいにおとうとみせったりしましょう」と女将おかみいました。

「しかし、おかねがありません」とゆきはいました。

心配しんぱいしないでください。おかねわたしがおしします。このまち一番いちばん茶道家さどうかなんですから、すぐにもかえすことが出来できますよ」と女将おかみいました。

第七章だいななしょう

買物かいもの

つぎあさゆきははやきました。ふるふくてから、温泉おんせん掃除そうじはじめました。しかし女将おかみはゆきをて、「このまち一番いちばん茶道家さどうかがそんなことをする必要ひつようはありません。さあ、きぬ着物きもの着替きかえてものきましょう。真珠しんじゅわすれないようにしてください」といました。

女将おかみはゆきの素性すじょうになるのか、市場いちばあいだに、色々いろいろ質問しつもんをしました。

「どちらで茶道さどうまなんだのですか」と女将おかみきました。

じつは、祖母そぼからちゃならいました」とゆきはこたえました。

「おかあさんや、おとうさんは?」と女将おかみきました。

ははちちわたしまれてからもなくくなりました」とゆきはこたえました。

「そうですか。あなたは今、おいくつですか」と女将おかみきました。

今年ことし十七じゅうななさいになります」とゆきはこたえました。

「そうですか。お祖母ばあさんのお名前なまえおしえていただけませんか」と女将おかみきました。

ゆきがお祖母ばあさんの名前なまえおしえたころ最初さいしょみせ到着とうちゃくしました。

女将おかみが「その名字みょうじ…」とたずねかけたとき番頭ばんとう店先みせさきあらわれました。「あっ、番頭ばんとうさん、こちらはうちのあたらしい腕利うでききの茶道家さどうか、ゆきさんです」と紹介しょうかいしました。

それから女将おかみ次々つぎつぎみせめぐって、ゆきを商人しょうにん紹介しょうかいしてまわりました。

ほどなくすると、あたらしい茶道家さどうかについて、まち住民じゅうみんみなくちにするようになりました。温泉おんせんってゆきのちゃ人々ひとびとみなおどろき、ゆきのちゃうでめました。そのあと数日間すうじつかん温泉おんせんはかつてないほどにぎやかでした。

第八章だいはっしょう

若殿わかとのとの出逢であ

しろなかでもあたらしい茶道家さどうかうでについてみな話題わだいにしていました。殿とのさまの長男ちょうなん家老かろうに「そのあたらしい茶道家さどうか名高なだかいお点前てまえを、今晩こんばんにでもてみたい。温泉おんせんって、手筈てはずととのえてくれ」といました。

かしこまりました」と家老かろうって、温泉おんせんかけました。

家老かろう温泉おんせん到着とうちゃくすると、「女将おかみちゃ予約よやくをしたいのだが」といました。

「はい。来週らいしゅうはいかがですか」と女将おかみいました。

今晩こんばんはどうだ。若殿わかとのさまがしろあたらしい茶道家さどうかのお手前てまえをごらんになりたいとおっしゃっておる」とすこてるように、家老かろう女将おかみいました。

若君わかぎみさまですか。はい、はい、今晩こんばん予約よやくれておきます。今晩こんばんかならしろかせます」と女将おかみこころよこたえました。

家老かろうったあとで、女将おかみはゆきのところにきました。「ゆきちゃん!今晩こんばんわかさまがしろであなたのお手前てまえてみたいそうです。あたらしい真珠しんじゅ首飾くびかざりと一番いちばんきれいなきぬ着物きものていきなさい」といました。

その温泉おんせんはやめにみせじまいしました。女将おかみはゆきがしろくために身支度みじたくをするのを手伝てつだいました。その夕刻ゆうこく、ゆきはしろきました。若殿わかとの部屋へや案内あんないされたあとで、「はじめまして。温泉おんせん茶道家さどうか、ゆきともうします。どうぞよろしくおねがいします」とゆきはいました。

「はじめまして、ゆき殿どの。よろしく」と若殿わかとのいました。

それからゆきはお点前てまえ披露ひろうしました。「あなたは本当ほんとう達者たっしゃ茶道家さどうかですね。毎晩まいばんここにて、お点前てまえ披露ひろうしてください」と若殿わかとのいました。

ゆきは「まことにお粗末そまつではございますが、おのぞみでしたら、かなら毎晩まいばんここにて、おちゃてさせていただきます」とって、温泉おんせんかえりました。

ゆきがったあとで、「あんなうつくしくて達者たっしゃ茶道家さどうかたことはいままでなかった。ひめのような風貌ふうぼうだ。彼女かのじょのことをもっとらなければならん。彼女かのじょのことをくして調しらべておくように」と若殿わかとの家老かろういました。

家老かろうは「おのぞみとあれば、なんでもいたします」とこたえました。

第九章だいきゅうしょう

家老かろう調査ちょうさ

つぎ家老かろう温泉おんせんきました。「女将おかみさん、わしは若殿わかとのさまより、あたらしい茶道家さどうかのことを調しらくすようにとおおせをたまわってきた。彼女かのじょについてっていることを全部ぜんぶおしえてください」といました。

女将おかみは「そうですね。ゆきは数日すうじつまえこの温泉おんせんて、おとうと手紙てがみわたしました。二人ふたりみち出会であって、ゆきはおとうとちゃをしました。ゆきはちいさなむらでお祖母ばあさんにそだてられたといました。おやはゆきがまれてからもなく二人ふたりともくなったといました。家系かけいほんってきました」とって、おばあさんの名前なまえおしえて、手紙てがみせました。

「そうか。十五じゅうごねんぐらいまえ、そのなまえ名高なだかかったようじゃ。その家系かけいてみたい」と家老かろういました。

女将おかみ家老かろうをゆきのところまでみちびいて「ゆきちゃん!若殿わかとの家老かろうさまがあなたの家系かけいてみたいとおっしゃっています」といました。

それからゆきは家老かろう家系かけいせました。家老かろう家系かけいをつぶさにあらためました。「このもんはよくおぼえておる。本当ほんとうにあなたの家紋かもんかの」といました。

ゆきは「それはかりません。このほんにそうしるされているだけですから」とこたえて、ちいさなむら生活せいかつ旅路たびじのことをかたりました。

それから家老かろう温泉おんせんからり、使者ししゃちいさなむら派遣はけんしました。

毎晩まいばんゆきはしろって、若殿わかとのちゃ振舞ふるまいました。あるゆうべ、若殿わかとのきつね尻尾しっぽつくられたうでかざりにづきました。「ゆき殿どの、どうしてそんなうでかざりを手首てくびいているのか」ときました。

「このうでかざりですか。じつは、幸運こううんのおまもりなのです。これはみち出会であったきつねいただいた尻尾しっぽつくられています」とゆきはこたえました。それからゆきは若殿わかとの旅路たびじのことをかたりました。

第十章だいじっしょう

家老かろう調査報告ちょうさほうこく

数日後すうじつご家老かろう若殿わかとの報告ほうこくしました。「若殿わかとのさま、れい茶道家さどうか調しらくしました。十五じゅうごねんぐらいまえ、ある老婆ろうば赤子あかごだった孫娘まごむすめとあるちいさなむらきました。そのあと、そこでしずかに二人ふたりまずしい生活せいかつおくりました。数週間すうしゅうかんまえ老婆ろうばんで、孫娘まごむすめむらりました。

「その、ある漁師りょうしがそのむらからこのまちまで途中とちゅうで、そのむすめ出会であいました。むすめ漁師りょうしあみつくろって、漁師りょうしむすめかいけました。むすめは、そのときはうでかざりを手首てくびいていませんでした。

「そのゆうべ、あるふく商人あきんどが(温泉おんせん女将おかみおとうとなのです)そのみち途中とちゅうむすめ出会であいました。むすめうでかざりを手首てくびすでいていて、かいなかつけたという真珠しんじゅ家系かけいっていました。商人あきんどむすめ女将おかみあて手紙てがみわたしました。

つぎ女将おかみへの手紙てがみち、うでかざりを手首てくびいていたむすめは、このまちもんました。温泉おんせんへの道順みちじゅんきました。そのもなく、うでかざりを手首てくびいていたむすめ温泉おんせんて、商人あきんどからの手紙てがみ女将おかみわたしました。女将おかみむすめ茶道さどうとしてやといました。

商人しょうにんたちみなむすめがゆきと名乗なのったことを確認かくにんしました。きつね山賊さんぞく実在じつざい確認かくにんできません。しかし、漁師りょうしむすめった砂浜すなはま商人あきんど野営やえいとの途中とちゅうに、はいかいつけられました。

「ごぞんじかもしれませんけど、十五年ごじゅうねんぐらいまえ、ある大名だいみょうたおされてしろ火事かじちてしまいました。その大名だいみょうには、有名ゆうめい茶道さどう母親ははおや赤子あかごむすめがいました。そのとき母親ははおやむすめ火事かじんだとみなおもいましたけど、遺体いたいまったつけられませんでした。大名だいみょう母親ははおや名前なまえわか茶道さどう祖母そぼ名前なまえおなじです。また、大名だいみょう家紋かもんわか茶道さどう家系かけいにあります」と家老かろういました。

面白おもしろい。父上ちちうえおしえたかたがいい」と若殿わかとのいました。それから二人ふたり殿とのさまのところにって、家老かろう報告ほうこくかえしました。家老かろうおわったあとで、殿とのさまは「そなたは、そのむすめ興味きょうみがあるのか」と若殿わかとのきました。

若殿わかとのは「もし父上ちちうえ了承りょうしょうをしていただければ、茶道さどう結婚けっこんするつもりでございます」とこたえました。

「その茶道さどう一目ひとめてみたいとおもう」といました。

そのゆうべ、ゆきは殿とのさまの部屋へやまねかれました。「はじめまして。温泉おんせん茶道さどう、ゆきともうします。どうぞよろしくおねがいします」といました。

殿とのさまは「そなたの風貌ふうぼう、、、。うむ、なつかしい」とつぶやきました。

ゆきがお手前てまえをしたあとで、殿とのさまは「そなたのおばあさまにうりふたつだ。彼女かのじょはよくおしえたものだ」といました。

ゆきは「左様さようでございますか。殿とのさま、よくまあわたし祖母そぼをご存知ぞんじでしたね?」ときました。

殿とのさまは「そなたのご両親りょうしんくなる以前いぜんぞんげておった。そなたの父上ちちうえ偉大いだい人物じんぶつで、わしと友達ともだちだった」といました。

祖母そぼおやについてはなにはなしませんでした。おしえてくださいませんか」とゆきはたずねました。

「うむ。しかし、まず息子むすこもうしたいことがある」と殿とのさまはいました。

若殿わかとのは「ゆきひめ、もしわたし結婚けっこんしてくだされば、かならず幸しあわせにします」といました。

「いえ、わたしひめではございません。わたしのようなおんな若殿わかとの結婚けっこんできません。かりません」とゆきはいました。

きみ父上ちちうえ大名だいみょうだった」と殿とのさまはいました。

「なんとったらいいか…。けれどももし若殿わかとのさまがそうおのぞみならば、おぼすままに」とゆきはいました。

それからさんにんながらくしゃべりました。

第十一章だいじゅういっしょう

忍者にんじゃ襲撃しゅうげき

一方いっぽう、あるねたふか老婆