目次もくじ

  1. 第一章だいいっしょう  ゆきの子供達こどもたち
  2. 第二章だいにしょう  れんなにをしている?
  3. 第三章だいさんしょう  狐子ここ捜索そうさく
  4. 第四章だいよんしょう  たすかった
  5. 第五章だいごしょう  たびすす
  6. 第六章だいろくしょう  殿とのとの茶席ちゃせき
  7. 第七章だいななしょう  たび準備じゅんび

第七章だいななしょう

たび準備じゅんび

つぎあさ殿とのさくら結婚けっこんしたいという大名だいみょうおとうともと使者ししゃおくった。また、宮大工みやだいくし、れん工芸品こうげいひんつくりをすすめるように命令めいれいした。

そして、狐一こいちし、「娘達むすめたちおとうとしろきたがっているようだ。おとうと了解りょうかいしてくれるかどうかはまだからないが、いずれにしてもたび準備じゅんびはじめなさい」とめいじた。

狐一こいち一礼いちれいするとった。「おそれながら、妖怪ようかいあばれているといううわさひろまっております。いまたびをしないほうがよろしいのではないでしょうか」

殿との興味きょうみなさそうにった。「この三年間さんねんかんというもの、おまえはずっとそんなことをっているぞ。だが、いままで妖怪ようかいがこのくにあらわれたことなど一度いちどたりともなく、とどいたのはみなきつねのいたずらのはなしばかり。そんなうわさでいちいちわたしわずらわせないでくれ」

狐一こいち不機嫌ふきげんそうにだまったままあたまげ、退いた。殿との部屋へやからつづ廊下ろうかあるいていると、ももすももってきた。

双子ふたご一人ひとりが「狐一こいちおじ!父上ちちうえたびゆるしてくれたのですか?」とくと、もう一人ひとりは「今度こんどは、私達わたしたち武士ぶしのようにうまりたいの!一年間いちねんかんうま練習れんしゅうをしてきたんですもの、駕籠かごになんてりたくないわ」と興奮こうふんしながらった。そして、二人ふたりともに「おねがい!おねがい!」とさけんだ。

狐一こいちくびった。「それはわたしめることではありませんよ。殿とのいてみてください」とうと、双子ふたご殿との部屋へやした。くびりながら廊下ろうかあるいている狐一こいち階段かいだんまえに、うしろから「やった!」とさけびとともってくる足音あしおとこえた。双子ふたご狐一こいちまわりで一躍ひとおどりし、「父上ちちうえゆるしてくれた!」とってから階段かいだんりた。

伯母上おばうえ子孫しそんはみんなわっているな。きつね人間にんげんじったせいかな。広子ひろこおれらの子供こどもはそのようにならないようにねがいたいものだ」と狐一こいち一人ひとりつぶやき、おもわず苦笑くしょうした。「まあ、ここにるまで、おれもそのようにっていたがな。責任せきにんたされるようになってからおれわったな」

宮大工みやだいく詰所つめしょでは、れんたな材木ざいもくえらんでいるところだった。殿との部屋へやからもどってて、れん様子ようす大工だいくが、「お嬢様じょうさま、そんな大変たいへん仕事しごとをご自分じぶんでなさるのはおやめください」とったが、れんはただ「いそがしいからほうっておいてよ」とこたえた。

大工だいくだまんだ。そして、たくからかみげた。「お嬢様じょうさま殿との工芸品こうげいひんつくるようにわたしにご命令めいれいなさいました。この図面ずめんのようにつくりたいのですけれど、このとしったでは若者わかものころのようにはこまかい部分ぶぶんがもはやえませんので、できる自信じしんがありません。どうか、わたしのこの細工さいく手伝てつだっていただいて、お嬢様じょうさまのその力仕事ちからしごとわたしめにおまかくださるならば本当ほんとうたすかります」といながら、かみれんまえした。

れんかみはらけ、「いそがしいとったでしょ…」といかけたが、ふいにまるくなって、れん大工だいくほうかみつかもうとした。「ちょ…ちょっとって!そのをもう一度いちどせてちょうだい。こんなに見事みごと意匠いしょうまれてから一度いちどたことがないわ。これはぜひともわたしがこれをつくらなくては」とってから、れんをよく検討けんとうしながら、必要ひつよう道具どうぐってるように口早くちばや大工だいくいつけた。

そうしてれん熱心ねっしん工芸品こうげいひんつくはじめた。そのように数日間すうにちかんったころ殿とのおとうと使者ししゃのやりりをかえし、訪問ほうもん日程にっていなどをめた。

さくら結婚けっこんしたいという大名だいみょうとの交渉こうしょう上手うまった。大名だいみょうさくら大名だいみょうおいとつがせるという代案だいあん同意でういし、見合みあいのせきもうけてくれるよう依頼いらいしてた。殿とのはすぐにそれに同意どういし、日程にってい娘達むすめたちかえってころめた。

狐一こいちたび準備じゅんびいそがしかった。護衛ごえい家来けらい駕籠かごきや荷運にひこびなどの人選じんせん宿やど手配てはいなど、たびまえ色々いろいろなことをしなければいけないのである。

姉妹達しまいたちおもおもいの荷作にづくりをした。さくら綺麗きれい着物きものれん大切たいせつちいさなおもちゃのいえ双子ふたごふところかくてる刃物はもの百合ゆりほんすずはたくさんのお菓子かし準備じゅんびしていた。